オルゴールの歴史と仕組みHistory & Inventions

どうして音が鳴るんだろう?

カリヨン付置時計
シリンダーオルゴール

ディスクオルゴール

箱を開けると動き出すぜんまい仕掛けのメカ。その源は中世ヨーロッパに遡ります。木製の円筒を回転させてハンマーを操作し、音の異なる鐘を打ち、自動的にメロディーを奏で、町中に時を知らせたカリヨン。オルゴールの起源といわれるカリヨンは、やがて時計の進化と共に姿を変え、18世紀末には鐘の代わりに長さの異なる何枚かの薄い鋼鉄製の板をはじいてメロディーを奏でる機構が考案されました。これこそが現代のスタンダードであるシリンダー・オルゴールを支える仕組みであり、その第一歩はスイスの時計職人アントワーヌ・ファーブルの発明といわれています。

録音という技術がなかった時代にオルゴールは、唯一の自動演奏装置として職人たちの手により進歩を遂げ、シリンダー・オルゴールは多くの上流階級に愛されました。19世紀末、新たにドイツでディスク・オルゴールが誕生しました。ディスクを交換することで多くの曲を楽しめるディスク・オルゴールは、レストランや酒場で重宝され、ポピュラーなオーディオ機器として時代を駆け抜けました。

進化を続けたオルゴール市場ですが、その終焉は間近に迫っていました。そのきっかけはエジソンによる蓄音機の発明です。ここからオルゴールは衰退の一途を辿ることになりました。

主役の座を奪われたオルゴールですが、歴史の随所でその存在価値を示すことになります。第二次大戦後、フィリピンで収容されていた旧日本兵が故郷を偲んで作った『モンテンルパの夜は更けて』という曲があります。この曲のオルゴールが作られ、当時のフィリピン大統領に贈られました。オルゴールの音色と曲に込められた思いを聞いた大統領は、心を動かされすべての日本兵を送還したといいます。オルゴールの音色が人々の命を救ったエピソードです。

人々の夢と共に進化を続ける自動演奏装置の数々。しかし、オルゴールのどこか懐かしい香り、優しい音色は誕生から200年以上経った今なお、色褪せることなく愛され続けています。


オルゴールの仕組み

(左上)18弁(シリンダー)、(右上)30弁(シリンダー)
(下)45弁(ディスク)

オルゴールは一般の楽器と異なり、使用できる音、演奏時間が限られており、すべてのオルゴールがオルゴール用に編曲されています。使用する音の数は、弁数で区別されており、弁数が多くなれば演奏時の音に厚みが増してきます。

オルゴールは2つのタイプに分けられます。まずはシリンダー・オルゴール(図1)。
曲はピンが埋め込まれたシリンダーに記録されています。シリンダーがぜんまいの力で回転し、ピンが振動板の弁をはじき、メロディーを奏でます。一方のディスク・オルゴール(図2)は、シリンダー・オルゴールのドラムを円盤状にしたもので、円盤に設けられた孔と突起が、櫛歯の前にとりつけた一つ一つが独立した回転体をひっかけると同時に弁を弾いて音を出す仕組みです。ぜひ、当館で豊かな音色をお楽しみください。